日本で金融機関で働く場合には、必ずと言っていいほど証券外務員資格を取る必要がありますが、シンガポールでも同様の必須のライセンスがあります。それがCMFAS 、CACSと言うものです。
証券外務員資格というと、日本で働くエリート金融マンからすると運転免許のようなものでしょ、と思われると思います。しかし、すでにこの試験を受けられた方はわかると思いますが、この試験については、日本語はおろか英語でも情報が全然出回っておらず、日本の証券外務員と違って、一般の参考書や過去問の類もオンラインのものをのぞいて販売されていません。情報がないので、模擬試験のレベルが本番とどの程度違うかなどもわからず五里霧中の中受験に挑むというような形になります。
果たしてニーズがどれほどあるのかはわかりませんが、自分も受験する際に情報が全然なく、とても不安だったのでこちらでまとめておこうと思います。これからシンガポールの金融業界で働き始めようとされている方の参考になれば幸いです。
目次
CMFAS
シンガポールのCMFASライセンスは、日本と異なり携わる業務ごとにモジュールが分かれており、以下のものがあります。アセマネの人は何番、証券販売に携わる人は何番、保険を扱うなら何番、といった具合です。
https://www.ibf.org.sg/programmes/examination/Pages/CMFAS-Overview.aspx
- Module 1A (M1A) – Rules & Regulations for Dealing in Securities (SGX-ST Members)
- Module 1B (M1B) – Rules & Regulations for Dealing in Securities (Non-SGX-ST Members)
- Module 2A (M2A) – Rules & Regulations for Trading in Futures (SGX-DT Members)
- Module 3 (M3) – Rules & Regulations for Fund Management
- Module 4A (M4A) – Rules & Regulations for Advising on Corporate Finance
- Module 4B (M4B) – Rules & Regulations for Advising on Corporate Finance (Solely Debt Securities)
- Module 6 (M6) – Securities Products & Analysis
- Module 6A (M6A) – Securities & Futures Product Knowledge
- Module 10 (M10) – Rules & Regulations for REIT Management, with Product Knowledge & Analysis
モジュールの中には、シンガポールの金融規制についての理解を問うもの(1Bなど)と、商品についての知識を問うもの(6、6A)などに分かれています。
どの資格が必要かについては、それぞれの会社のコンプライアンスの指示に従ってやることになり、通常資格をとって、MASに会社のRepresentativeとして登録されてから業務を行うことになるかと思います。つまり、この資格を取るまでは正式にはお仕事することができないので、それもプレッシャーになってきます。
CACS (Paper 1 & 2)
CACSは、Client Advisor Competency Standards (CACS) Assessmentの略で、プライベートバンキングを行う際に必要な資格とされています。公式には、以下のように記載されています。
The CACS Assessment is applicable to private banking professionals (or “Covered Persons”) who are in a client-facing role and provide financial advisory services to high net worth individuals.
Paper 1 と、Paper 2に別れており、1がレギュレーション関連と行動規範のような内容、2がプロダクトと保険、ウェルスプランニングに関する知識を問う内容になっています。
勉強法について
私の場合は、CMFASはIB、6、6Aの3科目、そしてCACSのペーパー1、2を受験する必要がありました。これらはIBFのホームページで試験登録をするとStudy Bookと言われるPDFのテキストを入手することができます。
受験した先輩などに話を聞くと、基本的にはこのテキストを読み込む必要があると言われましたが、このテキストは分量が非常に多い上に、初学者には難しく、特に日本人にとっては英語で理解するのも時間がかかるので、1ページ目からまともに読むと汗が止まらないと思います。英語に問題がないネイティブの友人も分量が多くげんなりしていたので、日本人にはなおさら大変だと思います。本当に合格した諸先輩型はみんなテキストを読んでいるのか、と疑問に思っていました。
効率的な勉強方法としては、本番の試験で問われる問題自体は、そこまで難しくないので、テキストはわからないところや細かいところはさらっと読み飛ばして、Mock examと言われる模擬試験問題集をやることをおすすめします。
とにかく模擬試験を回す
Mock Examについては、いくつかベンダーがあり、ベンダーごとに値段が大きく異なります。
私はCMFASはKhinloke、CACSはもっと安い他ベンダーのものを使って受けました。Khinlokeは他のベンダーと比べて高価にはなりますが、模擬試験の量も適度な量で、本番試験に8割くらいほぼ同じ内容、難易度のものが出題されるため大幅に勉強時間を削減できると思います。ちなみに名前は書きませんが、他の安いベンダーは殆ど試験に出ないものや関連しない問題だったりだったので試験に合格するという観点からはかなり効率が悪くなってしまいました。
一応下記にリンクを貼っていおきます。プライスは時期や科目によって変わるようなので直接お問い合わせください。
Khinloke https://www.khinloke.com/
よっぽど金融知識と語学に自信がある方をのぞいて、私のおすすめは断然Khinlokeです。新たな国・職場でプレッシャーがある中での受験をされる場合には心強い味方になると思います。
Khinlokeでやるという前提だと、模擬試験をまず回して、わからない部分を教科書で確認するという勉強方法で、日本で金融の経験がある方であれば1週間で1科目ずつというようなイメージで十分合格できると思います。私もCMFAS、CACSはそれぞれ1週間ずつくらいの勉強でほぼMock Examを回すだけで合格ができました。
おわりに
書き忘れてしまいましたが、予約はIBFのウェブサイトで行い、通常はMASの建物内のIBFの施設で行われます。一応電卓の貸し出しもありますが、自分で持って行った方が無難です。当日の試験は、パソコンが置いてある部屋で各自試験を受けていく形になります。同じ部屋で、違う科目を受けている人もいるので、早く終わって帰る人がいてもプレッシャーを感じる必要はありません。最後の問題の回答を提出すると、その場で合否がでます。以前は合格証をくれましたが、今は各自ウェブサイト上で確認することになるようです。
CMFASやCACSは基本的には一人で受験することになり、勉強仲間もいないし情報もないしで、私自身とても不安でした。もしこの記事が受験される方の参考になり、少しでも不安解消に繋がれば嬉しく思います。何かご不明なことがあれば、問い合わせから連絡をいただければ、ご回答できるかと思いますので、お気軽にご連絡ください。