シンガポールのファミリーオフィス誘致策(13X/13R)

金融立国のシンガポールでは世界の富裕層マネー、特に世界のファミリーオフィスを呼び込むため、さまざまなファミリーオフィス誘致のための施策を行ってきています。その中で、最近少しずつシンガポールの日本人の間でも話題になってきている13X、13Rについて今回取り上げてみようと思います。

13R / 13Xは、シンガポールのIncome Tax Actの13条 (Section 13)に規定されているファンドのための優遇税制のことをいい、20万ドルのローカル支出などの一定の要件とMAS(シンガポールの金融庁)からの認可を条件に、一部の所得を除いて免税の優遇を受けることができるというものです。

色々なウェブサイトに、適用要件についてはまとめられているので、ここでは主に、シンガポールに移住した日本人を前提に、メリットを簡単に考察してみようと思います。なお実際の適用にあたっては現地の会計事務所などに相談いただければと思います。


目次


メリット1 キャピタルゲインなどの課税の安定性

シンガポール法人は資産の譲渡益が「キャピタルゲイン」に該当するかで課税、非課税の取扱が変わることから、かねてより課税の不安定性が指摘されていました。13Xや13Rの元では「キャピタルゲイン」に該当するかを問わず資産の処分益が非課税となることから、課税上のステータスが安定するということが挙げられるかと思います。

メリット2 送金時課税を受ける外債利子や海外不動産所得について非課税

シンガポール法人で運用した場合には、外債利子や海外不動産所得についてシンガポール国内に送金された時点で法人税が課される点が、特に香港の法人税制と比較して不利だと言われていました。また、国内への送金をせずにオフショア口座での運用・送金などを行ったとしても、結局シンガポール国内で稼得した所得を戻すと課税される点が不便だという声も聞かれていました。この点、外債利子や海外不動産所得について免税となる点は、メリットがあるかと思います。日本人は典型的に外国債券での運用が多いため、結構インパクトがあるケースがあるように思います。

メリット3 ビザの安定性

近年、外国人の就労ビザについては最低給与額の引き上げや配偶者ビザでの就労の厳格化など、より厳しくなってきています。この点13X / 13Rの認可が降りたからといって、必ずしも就労ビザが保証されるわけではないものの、13X / 13R が認可された場合にはMAS(シンガポール金融庁)がサポートしてくれる、と言われています。居住の安定性という意味では富裕層の移住には意外と大きなメリットとなるかもしれません。


おわりに

今回は自分の勉強も兼ねて、13X / 13Rの利便性や適用メリットをまとめてみました。

適用要件についてはいろいろなウェブサイトで紹介されていると思いますので、そちらをご参照いただければと思います(もし要望があれば日本語でまとめようと思います。)